「ハンチバック」を読んで

書評

2023年に市川沙央さんが書いた「ハンチバック」という小説を先日読みました。「ハンチバック」とは、背中がS字に曲がっていること、すなわち「せむし」という意味です。この小説の中の主人公は、自分の障がいを「ハンチバック」と称しています。

主人公や同じ障がいを持つ人々は、普通の紙の本を読むことに大変な困難を感じています。生きることを削られながら本を読むのです。それなのに、多くの人々は紙の本の良さを当然のように楽んでおり、紙の匂いや感触はデジタルには勝てないと感想を述べあっています。これが著者の怒りです。アメリカの大学では、電子書籍化されていない教科書は使えないという法律がありますが、日本ではそのような配慮はまだ十分ではありません。印象的なのは「この国では障がい者がいないことになっている」という筆者の皮肉です。メディアも教育も、泥臭く生きている障がい者を取り上げることは少ないです。この現状に対して、私も少しばかり怒りを感じる側の人間です。

この小説には筆者の怒りや悲しみがつまっており、私もそれを少し感じることができました。この感情を苦しい立場の人、困っている立場の人のために活かすことができればと思いました。