曖昧に使っている??「見方・考え方」(学習指導要領)

授業

ここでは、学習指導要領に書かれている「見方・考え方」とはどのようなものなのか、そのような「見方・考え方」を働かせる授業とはどのようなものなのか記していきたいと思います。

「見方・考え方」とは

学習指導要領には「見方・考え方」という言葉があります。この用語、多くの教育関係者が良く分からないまま使っているのではないかと実は思っています。筆者もその一人でした。そこで、今回の学習指導要領で各科目において示されることになった「見方・考え方」について整理しておきます。

そもそも、文部科学省はこの「見方・考え方」の英訳を「way of seeing and viewing」とはしていません。そこで、正式な英訳を調べたところ「discipline-based epistemo-logical approach」としていました。つまり、学問的原理にもとづいたエピスティモロジカルなアプローチということでした。ここで聞きなれないエピスティモロジカルについて、辞書で調べてみたところ「認識論の、認識論的な」という意味らしいですが、日本語だとさらに混乱してしまいます。そこで、OECDの「コンセプト・ノート」を調べてみたところ「各学問分野の専門的知見を有する実践家が、どのように仕事をしたり、思考したりするのかということについての理解」と記されていました。

ここから考えられる「見方・考え方」のイメージとは、たとえば、温室効果ガス排出による地球環境問題の発生原因について、化学者は原因となる物質の排出について考え、気候学者は大気の状態を分析しようする、また経済学者は市場の失敗という観点から地球温暖化をとらえようとする。このようなアプローチの仕方のことを「見方・考え方」であると考えればよいだろうと考えました。

「見方・考え方」を働かせる授業とは

では、「見方・考え方」を働かせるため授業を行うには、どうしたらよいのでしょうか。やはり、各教科の知識そのものを理解させるだけでは不十分と言えるでしょう。それにとどまらず、専門的知識のある実践家などが現実の事象に対して「どのような視点や考え方で捉え、考察し、解決しようとするか」を示すことが重要でしょう。そういったお手本の考え方を紹介することが、生徒が授業で学んでいる知識を現実の事象にどのように活用するか、つまり「見方・考え方」を働かせる方法を真似るのに役立つと考えられます。

学習指導要領は、生徒が現実の課題解決に向けて学習を行っていくことを強調しています。これは「見方・考え方」を働かせる方法として有効であると考えるからでしょう。ただし、単に教科の知識をある程度学習した後に、現実の課題を自分たちで考えなさいという学習では、生徒が見通しを持って学習することが難しいと考えられます。

 そのため、前述したように、①その教科の知識をもつ専門家や実践家ならば、どのように解決するかを示すことによって知識の活用方法を教えること、②それを参考に「もしも、自分もそのような立場ならばどうするか?」という疑似体験させることの二点が「見方・考え方」を働かせるのに有効であると考えられます。