(1)経済とは何を意味するのか?
経済と聞いて皆さんはどんなことを思い浮かべるでしょうか?
おそらくほとんどの人がお金を想像するのではないかと思います。それはそれで正しいですが、結婚相手のマッチングの問題から地球環境問題まで経済の対象は実はかなり幅広いのです。
経済の語源は「経世済民」です。経世とは、世の中を治める、社会を運営するって意味です。済民とは、民を救う、人々の生活を良くするって意味です。経済とは簡単に言うと皆の生活をよくするために社会をどう運営するか、それに関わる事柄と考えればよいかと思います。もう一つ、経済は英語では、「economy」とも言いますね。例えば、飛行機に乗った時にファーストクラスとエコノミークラスがありますね。ファーストクラスはもちろん最初に飛行機に乗り込めるお客さんが使うからファーストなんでしょう。一方、エコノミークラスは何を意味しているのでしょうか?
これも経世済民に近い考え方です。エコノミークラスでは、できるだけ限られた空間で多くの人が座れるようにする。また、限られた予算の中で、できるだけ安い価格で、皆が目的地に到着できるようにしている。つまり、限られた資源の中で皆が幸せになるように考えられたものなのです。このエコノミークラスの事例から分かることは、経済を考える上では資源の希少性を考える必要があるということです。
希少性とは、皆が求めているにも関わらず、皆の満足度を満たすほどには社会に存在しないという意味です。たとえば、道端の石ころには一応限りがあります。しかし、石ころを求める人は少ないですよね。つまり、石ころは有限だけど、希少性はないと言えます。空気や海水なんかもそうですね。このようなものを経済用語では、自由財と言います。他方で、ダイヤモンドやお店の商品などは皆の欲望を満たすほどには社会に存在しない。これを経済財といいます。経済分野では、経済財をどうするかを考えることになります。あと目に見えてなくならないものを財、形として残らないものをサービスといいます。サービスとは、美容院で髪の毛を切ってもらう、学校で先生に勉強を教えてもらう、飛行機で目的地に運んでもらうといったものです。経済分野においては、このような財やサービスをまとめて財・サービスと言います。
他にも、経済分野では色々な用語が出てきますので、簡単に説明します。まず生産と消費です。生産とは何かを作ることだと思えばいいでしょう。一方、消費とは買って使ったり、食べたりすることです。経済財の中でも生産に関わるものを生産財と言います。たとえば、パン屋さんがパンを作るために用いる機械は生産財です。私が今持っているペンですが、これは教育サービスを生み出すために使っているので生産財ですよ。他方で、皆さんが使っているペンですがこれは教育サービスを消費するためにつかっているもので消費財ですね。このように何が消費財か何が生産財かというのは状況によって異なります。
(2)経済的なものの見方
先ほども言いました通り、経済の対象とは希少性をある財・サービスです。資源や予算に限りがある以上、あるものを選択すれば、他のものを諦めないといけない。このような状況をトレード・オフと言います。一番分かりやすい例が進路選択だと思います。大学進学を選べば、就職を諦めないといけないですよね。この場合、費用と得られるメリットを比較したらいいですよね。ここで経済学では費用の計算の仕方が日常の考え方とは異なります。たとえば、大学に行く費用とはいくらでしょうか?入学金、授業料、交通費、教科書代は費用だと言えます。しかし、経済学では、これだけを費用としません。他にも隠れた費用がありますよね。つまり、大学に行かずに働いていたら得られたであろう収入です。これを経済学では「機会費用」と言います。もしも、その選択を選ばなければ得られたものの内最大のものを指します。この考え方に立てば、就職することにも費用がともないますよね。つまり、大学に行っていたら得られたであろう収入ですね。以下のように考えることができます。
大学に行く実質的費用+高卒で4年間働いていたら得られた費用 VS 大学に行っていたら得られた費用
経済学は、このような機会費用まで考えて人間は合理的に意思決定を行うと考えます。今日では、このような人間の合理性を前提としない経済学として行動経済学というものもあります。行動経済学では、人間の意志決定は完璧ではなくしばしばミスをすることを前提として考えられた経済学です。
(3)2つの経済体制
経済活動とは、財・サービスを生産、消費、分配することを指します。生産や消費は説明しました。分配とは簡単に言うと富(儲け)が分けられることです。このような生産、消費、分配の仕方について2つの経済の仕組みがあります。一つは、資本主義国家における市場経済です。資本主義とは、大前提は誰もが財産を自分の好きなように使ってよいという考え方です。お金持ちは工場や機械を持って労働者を雇い経済活動ができます。市場経済とは、自由な売買のもとで生産、消費、分配を決めようするものです。人間の利己心に任せて経済活動を行おうとするものです。このような利己心にもとづく経済活動でも社会は豊かになると考えたのがアダム・スミスと言う人でした。
他方で、このような資本主義による市場経済を否定したのが、社会主義という考えかたでした。社会主義とは、資本主義国家による貧富の差を批判する形で生まれたものです。社会科学の父とされるマルクスという人が科学的な社会主義を確立しました。社会主義では資本主義のような私有財産は認めず、皆が平等に暮らせる社会をつくることを目指します。経済の仕組みは計画経済を取ります。計画経済とは、国家が誰が何をどれだけ作り、消費するかを決めるものです。分配については全員に同じ利益がもたらせます。資本主義が人間をアニマルのように利益追求するもの存在であると見なすのに対して、社会主義では人間は共同体の中でともに手を取り合って生きようとする存在であると考えていると思えばよいかと思います。