前回はピアジェについて記したので、次にピアジェのもとで5年ほど研究したパパート(1926~2016)の考えを取り上げる。主著は『マインドストーム』である。パパートはピアジェ同様に、学習者自らが構造を生み出す状況を創り出すべきだと考えた。彼が重視したのは、学習者が何かをつくるという経験をさせることだった。ピアジェの構成主義をもじって、自身の立場を「コンストラクティズム」と言った。特にパパートは、何かを創り出す際のデバックつまりバグ(間違い)をとり除く過程がとくに重要であると考えた。何かを創り出す場合には、一発で完璧なものができることはない。このような、作り出したものを改善していこうとする学習過程こそが、学習者自身が認識や知識を再構成するのに重要であると考えたのである。
社会科教育においても、よりよい仕組みを生徒に作らせる学習というのは多くの場で行われている。たとえば、政策提案学習などがそれにあたる。ただし、よりよい解決策を作らせて発表させて、それで終わりであったり、教師がそのような解決策を評価して終わりというものが多い。パパートの考え方にもとづけば、そのような授業では生徒が自身の認識の構造を再構成するには不十分であることになる。自分たちで自分たちの解決策を創り出すと同時に、その解決策のデバックつまり、間違いや不十分な点を学習者同士で指摘しあったり、修正するという過程が重要であるという示唆を与えてくれるものである。
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